テキストサイズ

もうLOVEっ! ハニー!

第6章 思惑先回り

 岳斗に誘われ、こばるもいることから参加を決めた。
 だがその裏ルールを去年知っているので困っていた。
 亜季が敵にいればよかったんだけど。
「三日間奴隷にするとか……」
 顎に手をかけながら神妙に囁く彼にふざけている気配はなかった。
 同室の亜季がこの一年彼の毒牙の犠牲にならなかったのは一重にルカの存在のせいだ。
 目の前でルカへの恋路に全力投球する亜季を見て、奈巳の精神力は最大まで鍛え上げられたことだろう。
 けどそろそろ悪戯一つでもしないとつまらないよね。
 今頃学園長挨拶が行われているであろう講堂を見つめる。
 頬に這わせた爪を立てる。
「亜季ほど猫耳が似合う子はいないと思うんだけどなあ……今年の学園祭、華海都寮の出し物を猫耳喫茶とかにして」
「なにぶつぶつ言ってんの」
「いえ。遠藤亜季に猫耳合うと思いません?」
「亜季? ああ。可愛いかも。でもかんなの方が似合いそうだなあ」
「あんたら何企ててんの」
 腕を組んで近づいてきた鳴海に二人は口を揃えて言った。
「可愛いものを愛でることかな」

 全校生徒が体育館に流れる。
 華海都寮生も例外じゃなく、三列は乱れ円のようになって私たちは移動していた。
「結局今年は誰が出るの?」
 美弥が誰にともなく尋ねる。
「新入生からはつばるだろ。在校生からはこばるとガクと奈己だったか?」
 司が答える。
「にゃっ? 三陸は? 無能?」
「うるせえですよ。今年は枠から外されたんです」
 赤髪をがしがしと掻きながら不満そうに陸が言い返す。
 どうやら寮生からは三人までしかエントリー出来ないそうだ。
「ま、オレとガク先輩の雄姿見てなって」
 ぽんぽんと肩を叩くこばるを睨む。
「俺だって出たかったっつの」
 私はつばるから離れて美弥と蘭に挟まれていた。
 がっちり腕を絡められて歩く。
「ねえ」
「はい?」
「昨日のお茶会、失敗だったかしら」
 蘭の言葉に私はつい頷きそうになってしまった。
 あの苦い一時間を思い出して。
 彼女の腕では制服姿でもベリテーネとかいう人形が揺れていた。
 恐らく入浴以外四六時中共にいるのでしょう。
 入浴も同じかもしれませんが。
「私は貴方たちには仲良くなって貰いたかったの。それだけなのよ」
「先輩のお気持ちは嬉しかったです」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ