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幸せな報復

第24章 幸せな報復 

 きっと、そうだ。

(恵美さん、僕のこと……覚えていますか?)

 そう聞いてみようかと思った。

 だが、すぐに首を横に振った。

(いや、待て。そんなことを聞いて、もし忘れていたものを思い出されたらどうするんだ)

 自分から墓穴を掘る必要はない。

 そっとしておこう。

 そもそも、もし恵美が自分を痴漢した男だと知っているのなら、そんな男の息子と結婚するはずがない。

 ましてや、今では同居までしている。

(うん。間違いない。恵美さんは知らないんだ)

 勘太郎は、自分に都合のいい結論を出して、勝手に納得した。

 改心したとはいえ、もともと狼男として生きてきた男である。

 人間になって長い年月が経った今でも、こういう姑息なところだけは、なかなか抜けないらしい。

 もっとも、勘太郎がどれだけ考えたところで、恵美の本心など分かるはずもなかった。

 実際には、恵美は痴漢男を探し続け、ついに勘太郎を特定していた。

 自宅まで突き止め、家族のことまで調べ上げている。

 そして、すべてを知ったうえで、浩志に近づいたのだ。

 つまり、勘太郎の推理は最初から見当違いだった。

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