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幸せな報復

第24章 幸せな報復 

 そもそもの始まりは、痴漢事件の翌日だった。

 駅で恵美に呼び止められた勘太郎が、何を思ったのか、その場から逃げ出してしまったのである。

 その思いがけない行動が、恵美の心に火をつけた。

 いや。

 もっと言えば、その前から二人の物語は始まっていたのかもしれない。

 駅で偶然出会った二人。

 それが偶然だったのか、必然だったのか。

 今となっては、誰にも分からない。

「なんなのよ……。アイドルで、しかも美女のわたしから逃げるなんて!」

 恵美にとって、男に逃げられるなど初めての経験だった。

 失恋らしい失恋をしたこともない。

 まして、自分が好意を向けた相手に、まるで存在そのものを拒絶されたように逃げられたのだ。

 その屈辱が、彼女の自尊心を大きく傷つけた。

「あのとき、現行犯で捕まえておけばよかった……」

 恵美は後悔した。

 しかし、本当は自分自身にも腹が立っていた。

「なんで、あんな男に……。あんなことをされて、何もできなかったなんて……」

 悔しくてたまらない。

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