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どこまでも玩具

第12章 晒された命

 朝食を食べ終え、着替えしか持ってこなかったことを思い出す。
 本当に受験生か俺は。
 やることがない。
 その時、寝室の机の上にデジカメを見つけた。
 フラッシュバックのように映像が蘇る。
―大胆な一枚撮れたよ―
―これ引き伸ばして保健室に貼ろうか?―
 心臓が早鐘を打つ。
 震える手でカメラを手に取る。
 バッテリーが無ければいいな。
 点かなければいいな。
 そんなことを願いながら、電源を押した。
 画面に床が映る。
 点いてしまった。
 急いでそれを元の位置に戻そうとする。
 けど指が離れない。
 また両手に包む。
 再生に切り替える。
 ドキドキしすぎて眩暈がする。
 俺はなにをしているんだろう。
 最新の写真に目が止まった。
 それは、昨夜のだった。
 俺の後ろ姿。
 着替えを取りに行くと言って、出て行ったときのだ。
 闇の中、街灯に照らされた背中。
 口を押さえてしまう。
 なんて……嬉しそうに走ってるんだ、俺。
 恥ずかしくなるほど。
 類沢は、なにを思ってレンズ越しに俺を見ていたんだろう。
 一つ前に送る。
 どこだろう。
 夕日が写っている。
 ハッとした。
 屋上だ。
 学園の。
 もしかしたら……
 縁起でもない考えが湧く。
 彼がここに上がることは二度とないかもしれない。
 二度と。
 写真を切り替える。
「えっ?」
 見たことある家。
 白い家。
 アカの父の家だ。
 なんで、それが写っているんだ。
 金原と帰る時は撮っていなかった。
 一人で戻ったんだろうか。
 あの後に?
 アカの父はいないはずだ。
 カメラから目を離す。
 見ない方がいいかもしれない。
 ここには、類沢しか知ってはいけないことがあるのかもしれない。
 今の写真だってそうだ。
 でも、未練がある。
 玄関を振り返る。
 帰ってはこないけど、悪いことしている気がしてならない。
 実際悪いことだが。
 言い訳を探しながら、フォルダ画面に移る。
 出来たら消してしまいたい過去が沢山ある。
 あの夜。
 知らない男に体を売った夜も。
 泣きながら逝く俺も。
 怖いくらい生々しくて、でも瞬きすら出来ないほど惹き付けられて。
 息が荒くなる。
 手が震える。
 俺の知らない俺がいる。
 類沢は……とっくに気づいていたんじゃないだろうか。
 こんな俺を見て。

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