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どこまでも玩具

第3章 枯らされた友情

 金原、約束破っちまったな。
「……あーあ。馬鹿」
 目頭が熱くなる。
 携帯が鳴り、メールを見る。
 瑞希から。
『本当にありがとう。二人に話して良かった』
 その画面が責めてくる。
 お前は何を聞いたのか。
 お前は何を誓ったのか。
 お前は何を庇ったのか。
 携帯を閉じる。
 ポタリと涙が落ちた。
 暗闇の中でもハッキリ見えた。
―……金原までさ、襲われたらどうすんだよ―
―金原まで弱み掴まれたら手も足も出ないよ―
 恐れた事態が起きている。
 止めなきゃ。
 なのに。






「……うー……ぅぅ」
「学校には拘束具とか無いからさ、悪いねマスクなんかで」
 オレは白衣を脱ぎながら笑う類沢を睨みつける。
「ナニ? その眼」
 ギシリ。
 類沢が片膝をベッドに乗せて、オレの髪を掴む。
 長く伸ばさなければ良かった。
 頭皮が剥げるんじゃないかって程の痛みを耐えて、睨み続ける。
 スッと目を細めて、類沢が手を離した。
 同時に頭が落とされる。
 ガンガン痛みが響く。
「んー……乱暴な生徒への体罰って何が良いと思う?」
 オレはベッドの頭に固定された拘束を解こうともがく。
「瑞希は言葉遣いが悪くてさ」
 手が止まる。
 その反応に彼はクスリと笑った。
「体罰だからねって言ったら、そういう顔してたよ」
 ガキン。
 ガキン。
「んんん!……ぅうんん!」
「あははは。何言ってるかわからないし、それは簡単に解けないよ」
 長い前髪を撫でつけながら、類沢はオレを見下ろす。
 正直今の環境を考えたくなかった。
 ベッドに拘束された上に、口は塞がれている。
 下校時間は過ぎ、生徒はいない。
 教員も電気の消えた保健室は不審に思わないだろう。
 唯一の救いは紅乃木だ。
 カーテンの向こうの時計を見る。
 六時十分。
 あと五十分すれば紅乃木が助けに来てくれる。
 五十分耐えればいいんだ。

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