どこまでも玩具
第3章 枯らされた友情
紅乃木は瞳孔を開いて俺の背後を見た。
振り返ると、金原が立っていた。
「金原、おはよう」
「ああ……瑞希体調は良さそうだな」
紅乃木が一挙一動を見極めるように金原を目で追っている。
理由もわからないから訊けない。
昨日何かあったんだろうか。
不意に金原が紅乃木の頭を触った。
ガタリと身を引く紅乃木に笑いかける。
「アカ、寝坊したのか? 寝癖」
バッと頭を抱える彼に、金原の笑みも寂しく凍った。
何だ。
触れてはいけないのか。
チャイムが鳴る。
結局何も聞けぬまま、始業した。
担任が来る度、俺は単語帳を開く。
視界に彼が入ると顔を伏せる。
いつもと変わらぬ態度に、胸焼けがしたが、口には出せない。
奴が笑うと、俺は泣きそうになった。
こんな感覚、早く消さなきゃ。
類沢に偶然遭うのも厭なので、休み時間は全て教室で過ごした。
前にサイトで見た言葉を思い出す。
ー夜に出歩かない方が良いのは、お嬢さんではなく痴漢の方だー
初めは何かと思ったが、意味を知って目が覚める思いがした。
何故、犯罪者が大手を振って、被害者の生活が狭められなければならないのか。
理由は単純。
相手が適わない相手だから。
俺はお嬢さんというわけ。
虚しさに乾いた笑いが零れた。
「瑞希、昼食買いに行こうぜ」
金原がやってきて言った。
「あ……俺はいいや。食欲そんなねぇし」
「廊下で」
「え?」
「廊下で誰に会っても今度は連れて行かせないからさ」
「あ……」
あぁ、そうだ。
こういう仲間だった。
多分、篠田に連れて行かせた責任を感じてるんだろう。
俺は申し訳なさと嬉しさで一杯になる。
「ありがと、な」
「ほら行くぞ」
「あ、アカは」
ピタリ。
今までの空気が固まった。
肩に回された金原の腕が落ちる。
「……さぁな」
金原の目に光は無かった。
振り返ると、金原が立っていた。
「金原、おはよう」
「ああ……瑞希体調は良さそうだな」
紅乃木が一挙一動を見極めるように金原を目で追っている。
理由もわからないから訊けない。
昨日何かあったんだろうか。
不意に金原が紅乃木の頭を触った。
ガタリと身を引く紅乃木に笑いかける。
「アカ、寝坊したのか? 寝癖」
バッと頭を抱える彼に、金原の笑みも寂しく凍った。
何だ。
触れてはいけないのか。
チャイムが鳴る。
結局何も聞けぬまま、始業した。
担任が来る度、俺は単語帳を開く。
視界に彼が入ると顔を伏せる。
いつもと変わらぬ態度に、胸焼けがしたが、口には出せない。
奴が笑うと、俺は泣きそうになった。
こんな感覚、早く消さなきゃ。
類沢に偶然遭うのも厭なので、休み時間は全て教室で過ごした。
前にサイトで見た言葉を思い出す。
ー夜に出歩かない方が良いのは、お嬢さんではなく痴漢の方だー
初めは何かと思ったが、意味を知って目が覚める思いがした。
何故、犯罪者が大手を振って、被害者の生活が狭められなければならないのか。
理由は単純。
相手が適わない相手だから。
俺はお嬢さんというわけ。
虚しさに乾いた笑いが零れた。
「瑞希、昼食買いに行こうぜ」
金原がやってきて言った。
「あ……俺はいいや。食欲そんなねぇし」
「廊下で」
「え?」
「廊下で誰に会っても今度は連れて行かせないからさ」
「あ……」
あぁ、そうだ。
こういう仲間だった。
多分、篠田に連れて行かせた責任を感じてるんだろう。
俺は申し訳なさと嬉しさで一杯になる。
「ありがと、な」
「ほら行くぞ」
「あ、アカは」
ピタリ。
今までの空気が固まった。
肩に回された金原の腕が落ちる。
「……さぁな」
金原の目に光は無かった。