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どこまでも玩具

第1章 現れた白衣

「え?」
 俺はそのままソファに倒れ込む。
 カランと音を立ててボトルが転がった。
 それを見守りながら、疑問を晴らそうとする。
「態度悪いね、お前」
 類沢が上に乗っている。
 両肩を押さえつけられ、太股の間に足を入れられているので身動きとれない。
 状況が理解できない。
「…は……っなれろ」
 類沢を見上げる形で抵抗する。
 目を細めて笑む彼に、身の危険を感じた。
「どけっつってんだ!」
 予想以上に自分の怒鳴り声が響く。
 保健室独特の雰囲気に圧迫されて苦しくなる。
 体の仕組みなど知らないが、肩を封じられると、腕の動きはかなり制限される。
 何より力が入らない。
 鳥肌が立つ。
 俺は、今、何も出来ない。
「宮内瑞希……三年一組二十八番」
 舌先で言葉を転がすように類沢が囁く。
 ゾワリとする。
「なんで、覚えてんの」
 確認しよう。
 この男は今日この学校に来た。
 委員長はともかく、何故一生徒の俺の名前を、番号まで揃えて知っているんだ。
 類沢が顔を近づける。
 夕日が反射して艶やかに輝く瞳が、俺を真っ直ぐ捕らえている。
 そのまま唇が触れそうな位置で類沢は微笑む。
「気に入ったから」
 吐息が唇にかかる。
 甘く、酔いそうな香りに包まれる。
 俺は首を回してそれから逃げた。
 だが、ソファに固定されてるせいで殆ど避けられない。
「……俺は気に入んないね」
 なんとか悪態をぶつける。
 しかし、類沢は涼しい顔で俺の頬に手を触れた。
 よし、片腕が自由になった。
 あとは、こいつを突き飛ばして逃げるだけだ。
 だが、腕は動かなかった。
 動かせなかった。
 目の前に類沢の瞳がある。
 クチュリと音がして、舌に違和感が起きる。
 類沢の舌が俺の口の中に侵入しているのだと気づくのに数秒かかった。
 さらに、その数秒で逃げ場を失ったと気づくのに十秒かかった。
 ヌル。
 唾液が唇の端から零れる。
「は……ッッ……んん」
 時折入る空気に貪りつく。
 じゃなければ酸欠する。
 俺は解放された腕で類沢の胸を叩いた。
 グチュ。
 わざと音を立てているのか。
 クチュ。
 類沢は俺の顔を動かして、色んな角度から咥内を犯した。
 気持ち悪い。
 何度も舌を咬んでやろうとしたが、寸前で歯列をなぞられ力が抜ける。
「……ん………んぅ」
 視界が眩む。

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