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どこまでも玩具

第4章 放たれた憎悪


 現に有紗は随分立場が変わってしまったのだ。
「う……あーちゃんとかが他人みたいな目で見るんだよ~……ヤだよ」
 顔を覆って泣き出す彼女の肩を抱く。
 友人として。
「オレは信じる」
 しかできない。
「……本当に?」
「信じるよ」
 その時の有紗の表情は忘れられない。
 今までの憂いと、仲間を得た恍惚感と、利用の手順を考える支配欲。
 全てがない交ぜになった、見てられない顔だった。
 こんな女だったっけ。
 少し虚しくなる。
 だが、放っておいたら壊れてしまう。
 だから、救わなきゃ。
「で、有紗はどうなって欲しいの?」
「……」
 途端に黙る。
 まだ信用しきってないのか。
「どうしたいの?」
「せんせーを……」
 重い口が突然開いた。
「私のものにしたい」
 横顔が本気だと告げていた。
「それは……」
 やめたほうがいい。
 あいつが何したか知ってるか。
 瑞希を襲ったんだぞ。
 オレまでヤられたんだぞ。
 冷徹さは気づいてからじゃ手遅れなくらい半端ないからな。
 何を言えばいい。
「私、せんせー見返してやんなきゃ気が済まないの」
 何を言えばやめてくれる。
 腐っても元カノだ。
 類沢の遊びで陵辱されるなど耐えられない。
 しかし、言えば瑞希を裏切ることになる。
「ね、協力してくれる?」
 世界は、迷うオレを待つほど優しくはない。
「圭吾となら出来るよ!」
 何を?
 その問いはぐっと飲み込んだ。
 有紗はニコニコ笑って計画を話す。
 サボり常習犯の彼女は、授業中にでも保健室に行ける。
 そうして、生徒に手を出したら写真に納めて強請ればいいのだと。
 そんな簡単に行くわけがない。
 一緒にベッドに押し倒されるのが関の山だろう。
「危険だよ」
「で……でもさ、このまま引くわけにはいかないじゃん」
「そんなに類沢が好きなの?」
「すっ、好きじゃないよ。見返してやりたいだけって言ってるじゃん!」
 見返してヤりたいだけ、ね。
 日が暮れる。
 瑞希は無事に家に帰っただろうか。
 きっと校外でも奴は連絡してきている。
 オレのは口封じ。
 じゃあ、瑞希のは何が目的なんだ。
 なんでそんなにしつこくする。
 なんで何度も苦しめる。
 なんで……瑞希なんだよ。

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