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どこまでも玩具

第7章 阻まれた関係

「そうだね」
 言葉が続かない。
「それがどうかした?」
 白衣が揺れる。
 カーテンと混ざる。
 この男は……。
 俺は脱力して頭を抱える。
「……てことは、あなたは俺を犯したこともベラベラ喋ったってことですね」
「それは違う」
 あくまで落ち着いている類沢に怒鳴りつける。
「何が違うんだよっ! どうせ有紗に身を引かせるために全部話したんだろうが! どうせそんな噂が立とうが俺がどうなろうが関係ないもんなっ。一瞬でも優しいと思った俺が馬鹿だったよ、この最低野郎!」
 叫び終わると同時に駆け出した。
 また捕まえられるのが怖かったってのもある。
 ただ、一番は類沢の顔を見ていられなかったからだ。
 叫んでいる間に、みるみる無表情に固まっていくあの顔を。
 それが何より怖かった。

 頭が痛い。
 本当に痛い。
 次の時間なんだっけ。
 どうでもいいけど。
 知らぬ間に屋上にいた。
 寒い。
 フェンスにもたれて校庭を眺める。
 マラソンに励む下級生がいる。
 体育教師が掛け声をかける。
 それを聞いているうちに頭が冷えてきた。
 なんでここに来たんだろう。
 なんで、あんなに怒ったんだろう。
 有紗に話されたから。
 知られたくないことがバレるのが怖かったから。
 しっくりこない。
 なんでだ。
 絶対自分の口から有紗にアドレスも家も教えたくない。
 まあ家は知らないんだけど。
 そういえば、なんで類沢は俺の家を知っていたんだろうか。
 学校の資料の住所から?
 それとも篠田が?
 類沢は知っているのに、俺は家を知らない。
 それもなんだか腹立たしい。
 いや、違う。
 こんなの腹立たしくなんかない。
 ああ、変だ俺。
 なんか変だ。
 鳥肌が立ち、寒気がする。
 そろそろ戻ろうか。
 振り返った時だった。

「ここにいたんだぁ」

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