
あの店に彼がいるそうです
第12章 どんな手でも使いますよ
「申し訳ないねんけど、鵜亥はんへの面会は二時間ほどお待ち頂くで」
「なぜ鵜亥に用があるとわかった?」
篠田の追及に汐野はにやにやと答える。
「あんさん、篠田春哉やろ? シエラのチーフの。自分の店のホスト一人の為にNo.1まで犠牲にして物好きなやっちゃな」
犠牲?
何を言ってるんだ。
「お前と話に来たんじゃない。さっさと鵜亥と会わせろ」
「確かに巧と鵜亥はんの再会は見たくもあるけどな……ダメや」
そこで限界だというように戒が進み出る。
「まだあんなこと続けてんのか」
「おっほほ。どした、運び屋。妙に威勢がええやん? 鵜亥はんの計らいで生かしてもろとる身の癖して」
「てめえ……」
その怒った肩を篠田が押さえる。
戒は息を荒げながらも引き下がった。
「頼む。瑞希と鵜亥と話がしたい」
「とりあえず、控室に案内するからついて来いや」
そう言ってエレベーターのボタンを押しに向かった汐野の背中を三人で追う。
ポーン、と軽快な音がして鉄の扉が開いた。
乗り込んだ汐野の手招きに、三人がそれぞれ躊躇いを浮かべる。
その反応にニヤリとした汐野が扉を閉じようとする。
「はよせんと、閉まるでー」
「っくそ」
駆け出した戒が手を挟んで扉に縋る。
力任せに開いた扉の隙間で汐野はただ腕を組んで微笑んだ。
遅れて二人も乗り込んだ。
密室に四人が緊張した空気の中佇む。
「よお来たな、巧」
「……もう会うことはないと思ってましたが」
かつての恐れた相手に敬語以外は使えない。
巧の震える肩を戒はずっと抱いていた。
その様子を薄ら笑いを浮かべて汐野は眺める。
「鵜亥はんが見たら発狂もんやで」
「狂わせればいいだろ。そしたらお前のものになるかもしれないぞ」
「……何を言うとんの」
篠田の言葉に初めて汐野が動揺を見せる。
「手に入れたい相手が上司だと大変な気苦労もあるだろう。忠実な部下で一生そばにいる、か。健気なことで」
「たった数分でよおわかった口利くなあ?」
「わかりやすいんだよ」
青筋を浮かせた汐野が言い返そうとした途端、扉が開く。
目的の階に着いたようで、四人はより緊張を深めて降りた。
「あれ、汐野さん戻ってたんすか」
部下の一人らしい男が出迎える。
「ああ。今度はお客さんの迎えに行ってたんや」
「お疲れ様です」
入れ違いに男は下に降りて行った。
「なぜ鵜亥に用があるとわかった?」
篠田の追及に汐野はにやにやと答える。
「あんさん、篠田春哉やろ? シエラのチーフの。自分の店のホスト一人の為にNo.1まで犠牲にして物好きなやっちゃな」
犠牲?
何を言ってるんだ。
「お前と話に来たんじゃない。さっさと鵜亥と会わせろ」
「確かに巧と鵜亥はんの再会は見たくもあるけどな……ダメや」
そこで限界だというように戒が進み出る。
「まだあんなこと続けてんのか」
「おっほほ。どした、運び屋。妙に威勢がええやん? 鵜亥はんの計らいで生かしてもろとる身の癖して」
「てめえ……」
その怒った肩を篠田が押さえる。
戒は息を荒げながらも引き下がった。
「頼む。瑞希と鵜亥と話がしたい」
「とりあえず、控室に案内するからついて来いや」
そう言ってエレベーターのボタンを押しに向かった汐野の背中を三人で追う。
ポーン、と軽快な音がして鉄の扉が開いた。
乗り込んだ汐野の手招きに、三人がそれぞれ躊躇いを浮かべる。
その反応にニヤリとした汐野が扉を閉じようとする。
「はよせんと、閉まるでー」
「っくそ」
駆け出した戒が手を挟んで扉に縋る。
力任せに開いた扉の隙間で汐野はただ腕を組んで微笑んだ。
遅れて二人も乗り込んだ。
密室に四人が緊張した空気の中佇む。
「よお来たな、巧」
「……もう会うことはないと思ってましたが」
かつての恐れた相手に敬語以外は使えない。
巧の震える肩を戒はずっと抱いていた。
その様子を薄ら笑いを浮かべて汐野は眺める。
「鵜亥はんが見たら発狂もんやで」
「狂わせればいいだろ。そしたらお前のものになるかもしれないぞ」
「……何を言うとんの」
篠田の言葉に初めて汐野が動揺を見せる。
「手に入れたい相手が上司だと大変な気苦労もあるだろう。忠実な部下で一生そばにいる、か。健気なことで」
「たった数分でよおわかった口利くなあ?」
「わかりやすいんだよ」
青筋を浮かせた汐野が言い返そうとした途端、扉が開く。
目的の階に着いたようで、四人はより緊張を深めて降りた。
「あれ、汐野さん戻ってたんすか」
部下の一人らしい男が出迎える。
「ああ。今度はお客さんの迎えに行ってたんや」
「お疲れ様です」
入れ違いに男は下に降りて行った。
