テキストサイズ

あの店に彼がいるそうです

第4章 超絶マッハでヤバい状況です

「雅」
「……ん?」
 夜景を眺めて、篠田が呟く。
「派閥のコントロールは怠るなよ。気づかないうちに客を盗んでいたら例外なく辞めさせるからな」
「あぁ」
「うちは絶対に"名義屋"を使わない。いいな」
「わかったよ」
 三杯目を注文する。
 飲もうとした時、篠田が時計を示した。
「一時だぞ。待たせっぱなしじゃないのか」
「瑞希のこと?」
「そうだ」
 グラスを置く。
 ニヤリと口端を上げた。
「眠そうにしてたぞ。ちゃんと寝かせてやれよ」
 一緒に住んでいることを篠田は知っている。
 毎日同じに出勤して、帰っていればそうだろう。
「僕は何もしてないよ」
 言いながらもコートを羽織る。
 すぐに早足でバーを出た。

 篠田は類沢の背中を見ながら、財布を取り出した。
「何もしていない? 冗談だろ」
 そして二人分の酒代を払った。
 今夜も奢りだ。
 雅。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ