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雨とピアノとノクターン

第5章 ピアノ編:覇者の美学

オイラがそいつを街で見かけたのは、本当に偶然だった…。一緒に歩いていた、中坊からの後輩である、飛坂が
「げっ!!先輩っ!ボク、犬のウンコ踏んじゃいましたっ!!」
と、いきなり大騒ぎしやがったとき、そいつは可笑しそうな表情を堪えながら、オイラと飛坂の前を通り過ぎていったんだ…。
 金髪で大きな瞳。…確か、青葉学園の制服だった。
「なんか可愛くてエロくてアートだな!!久しぶりにイイ素材だった!決めたぞ!あいつはオイラのものだ!!」
 飛坂は靴の裏についたアンラッキーな犬の落し物を、道路で拭い取るような格好をしながら、言った。
「…せんぱーい!アレ、鳴海悠生ッスよ?以前、いろんな学校で暴れまわった、やんちゃくちゃ坊主で有名だったんスけどねー、ずいぶん前からピタッ…と大人しくなったそーです」
「…アイツを知ってるのか、飛坂?」
「知ってるも、知らないも…超有名ッスよ?知らないの先輩だけですから…」
 オイラはそのまま飛坂の首ねっこをシメてやろうかと思ったが、一目ぼれしたアイツの情報が知りたいからしぶしぶ離してやることにした。
 飛坂は咳き込むようにして絞めかけられた気道を労わるようにして話しはじめた。

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