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雨とピアノとノクターン

第1章 出会い編:金髪の野良猫

あまりの粗野な態度にめまいがしそうだ。少なくとも、初対面の相手に遇する言葉ではないと思う…。
「相手の名前を知りたいときは、まずは自分の名前から名乗るものじゃないのかい?それに…君は道に倒れていたのを僕に助けてもらってここに連れて来られている。それくらいの想像力もないのか?」
 その金髪アタマの野良猫は頭もユルいヤツだったらしく、僕の顔を逆に睨みつけ、ムッとした表情で答えた。
「名前は…|鳴海 悠生《なるみひさき》。でも、オレはオメーに助けてくれって、頼んだ覚えはねーよ」
「…だろうな。僕の気まぐれで助けた結果がコレだ…。君が礼も言えない馬鹿だと解っていながら、僕はあえてタクシーを使ってまで連れて帰ってきたのだから」
 皮肉たっぷりで僕は彼に苦笑しながらそう言ってやった。大富豪の後見人だかなんだか知らないが、そんな有り難い後ろ盾を持つことを幸いに、好き勝手やって、歓楽街の路地裏で泥水にまみれているなんて…甘ったれにもほどがある。
「では、鳴海君。僕にちゃんと礼を言ってから出て行ってもらうよ」
「…ちょ…ちょっと待ってくれよ?ホントにお前、誰だって?出て行けって言われれば出ていくけどさ、だいたいの場所を教えてくれてもよくね?」
 強気だった彼が一転、鳴海は慌てて僕にもう一度聞き返した。
「…僕の名前は佐屋輝。青葉学園高等学校2年、生徒会長だ」
「えっ…?じゃ、うちのガッコの…あの…ガチガチで面白味もない、生徒会長って…」
 …なんだ、僕のこと、少しは知っているのか。ケンカに明け暮れているようなヤツだから、僕のことなど到底思考の圏外だと思っていたけれど…。

「…ちなみ、ここは山の手○○ケ丘。僕の自宅だ」
「山の手○○ケ丘!オレんちの正反対じゃねーかよ?なんでこんな高級住宅街に住んでるんだ?お前、家の人は?」
「…家族は他界していない。僕ひとりでここに住んでる…」

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