
雨とピアノとノクターン
第6章 ピアノ編:完敗?
勝負の当日、青葉学園の第二ホールにはオーディエンスが溢れかえっていた。
青葉学園の生徒はもちろん、暁学園からも大勢の台場翔の信奉者が続々とつめかけた。
最初に弾く演奏者は、勝負を挑んできた台場からだった。ステージに堂々と据えられたスタインウェイの前にうやうやしく立ち、彼は一礼した。
会場内のざわつきは、彼がピアノスツールに座ると同時にピタリと止む。
ステージの袖で、佐屋は壁にもたれ、目を閉じて演奏を待っている。そして、それを少し離れたところから鳴海は見守っている。
酔狂な動機で始まったこの勝負だが、挑んできた台場を佐屋は完膚なきまでに叩きのめすほどに、神経が尖っているのがわかる。
台場の演奏が始まった。ファンファーレのように叩きつける序奏から右手への主題。左手からクロス。88鍵を余すことなく駆けまわる。
場内はしんと静まり返る…。
高音域の超高速運指に感嘆の溜息がもれる。
鳴海はそれを聴きながら、目をかたくなにつぶる。
大丈夫…。
きっと…佐屋なら勝てる…。
台場の演奏が終わると、場内はスタンディングオーベーションが起きた。
彼にとっては完全アウェイの状態だというのに、この轟々と渦のように鳴り止まぬ拍手は、いかに彼の演奏が素晴らしかったかという証拠だった。
青葉学園の生徒はもちろん、暁学園からも大勢の台場翔の信奉者が続々とつめかけた。
最初に弾く演奏者は、勝負を挑んできた台場からだった。ステージに堂々と据えられたスタインウェイの前にうやうやしく立ち、彼は一礼した。
会場内のざわつきは、彼がピアノスツールに座ると同時にピタリと止む。
ステージの袖で、佐屋は壁にもたれ、目を閉じて演奏を待っている。そして、それを少し離れたところから鳴海は見守っている。
酔狂な動機で始まったこの勝負だが、挑んできた台場を佐屋は完膚なきまでに叩きのめすほどに、神経が尖っているのがわかる。
台場の演奏が始まった。ファンファーレのように叩きつける序奏から右手への主題。左手からクロス。88鍵を余すことなく駆けまわる。
場内はしんと静まり返る…。
高音域の超高速運指に感嘆の溜息がもれる。
鳴海はそれを聴きながら、目をかたくなにつぶる。
大丈夫…。
きっと…佐屋なら勝てる…。
台場の演奏が終わると、場内はスタンディングオーベーションが起きた。
彼にとっては完全アウェイの状態だというのに、この轟々と渦のように鳴り止まぬ拍手は、いかに彼の演奏が素晴らしかったかという証拠だった。
