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雨とピアノとノクターン

第6章 ピアノ編:完敗?

嵐のような演奏が終わった。
 一瞬の静寂…。そして…

「bravo~っ!」
 ホールのオーディエンスが一斉に立ち上がり、拍手の渦が出来た。佐屋はスツールに座ったまま、しばらく呆然としていた。が、客席の方へ目をやり、一礼、そして…

 そして、舞台袖からこちらを見守る、鳴海を見つめた。
 おいで……鳴海。
 ここへ来て。
 僕の隣に…。
 佐屋の目がそんな風に呼んでいる。
 戦い終えた佐屋の輝くほどの優しい笑顔。
 舞台袖から飛び出し、鳴海は佐屋の胸に飛び込んだ。客席から歓声が上がる。
「まだ勝敗が決まってねーのに…?」
 台場がムッとしながら舞台袖でぼやくと、彼の肩をポンポン…と付き添ってきた飛坂が叩いた。
「帰りましょう…台場パイセン。もう、終わりましたよ?」
「…あァ?なんだってんだよ?まだ結果出てないだろうーが?」
「最初っから結果は出てます。………あの二人、引き離すなんて…台場先輩、
ゲージュツ家のやることじゃないって、思いますヨ…」

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