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雨とピアノとノクターン

第7章 文化祭編:ラストダンス

翌日、生徒会室で執務中の佐屋は後夜祭について各委員たちと協議をしていた。
「年々、派手になっているから今年はファイヤーストームは中止にするべきかと意見が出てますが…」
「中止ですか…。別に安全面など毎年問題もないですし、僕はダンスぐらいなら構わないと思いますよ?」
 委員たちは佐屋のその一言がよほど意外に思えたのだろう。驚いた表情を隠せないでいる。いつもの佐屋なら即座に中止の方向に意見が傾くと思われていたらしい。
「……会長がそうおっしゃるなんて、意外でした」
「そうかい?…うん、まぁ…僕も今年は個人的には参加…してみたいかな」
 少し照れを隠すようにして、佐屋は微笑んだ。
「むやみにせっかくの楽しみを中止にしては、全学園生たちが大いに落胆してしまうだろうからね。反対意見の諸君には、僕から説得しておきますよ…。
では、皆さん、よろしく…」
 会議を終え、引き続き生徒会室を移動しようとした佐屋に、ふと物陰から手が延びた。
「………っ!」
 思わずバランスを崩しそうになった佐屋だったが、自分の腕に延びてきた手を掴むと、その感触だけで誰なのか判ってしまった。
「……嬉しいな、君からこんな積極的なアプローチがあるなんて、思わなかったよ」
「……だってこうでもしなきゃ、家に帰ってきたら佐屋はすぐ疲れて眠っちゃうし…。まともに話も出来ないだろ!」
「…そうだね。最近はお昼さえもカフェテリアで打ち合わせをしていたから、
鳴海とまともに話もしていなかった…。悪かったよ、ごめん…」

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