担当とハプバーで
第6章 墓まで連れ添う秘密たち
口角を上げたまま、ハヤテが左隣に仰向けになった。
組んだ両手に頭を乗せて、片膝を曲げて。
「金曜は終電間に合った?」
チラッと顔を向けて尋ねる。
その顔の造形の良さを凝視してしまう。
この角度から見ると鼻筋綺麗だな。
まつ毛もなんでそんなに長いんだろ。
「うん。喧嘩したけど……」
「ああ、だから今日早めたんだ」
「……どうせ今日も日付変わってからしか帰ってこないし。前回も朝までハヤテと居た方が良かった」
「そしたら今日は無かったかもな」
「えっ」
緩慢に瞬きしたハヤテが空を見上げる。
「前回モノ足んなかったから今日誘った。俺がなんであそこに通ってるかって、彼女もいなけりゃセフレもいねえわけ」
「面倒……だから?」
「一言にすりゃね。毎晩何人も自分以外の女口説いてる男に嫉妬しないでついてくる女なんて、頭おかしい」
「前も言った。ホストは彼氏に向かないって」
ずず、と足をシーツに擦る。
なんだか胸がザワザワする。
そんなの、わかってるのに。
言われなくてもわかってる。
寂しさに突き落とされそうで、ハヤテにしがみつくように抱きついた。
濡れた肌が密着して、それでも遠すぎて。
脇腹をぎゅっと。
「くすぐったいって」
笑いながら横を向いたハヤテが、包み込むように抱きしめ返す。
その腕の中は逞しくて温かい。
「また、舐めたい……ハヤテの」
沈黙が怖くて、つい口にしてしまう。
ふしだらな欲求も相席して。
「いいでしょ」
薄い色の乳首に口付けする。
ハヤテの腕がピクリと反応した。
「隙あらばだな、凛音」
呆れた声に下唇を噛む。
苦く笑ったハヤテの顔を見つめる。
絡んだ脚が汗ばんでくる。
目尻を親指で拭われてから、涙が出ているのに気がついた。
ダメだ。
泣いたりしたら面倒くさい女になる。
ぎゅっと目を閉じて自分でぐしぐしと拭う。
「だって、今日が、最後みたいに、言うから……怖くって」
ああ、もう。
バカ。
三十過ぎてみっともない。
こんなの男が一番嫌うやつなのに。
知ってるのに。
「それってさあ……」
低い声に涙が止まる。
ああ、怖い。
なんて言うの。
なんて言われるの。
顔が見れない。
ハヤテの手がうなじを撫でる。
耳元に唇を近づけて囁いた。
「頭おかしくなって……俺の女になりたいってこと?」