担当とハプバーで
第7章 皮肉のパーティ
電車に揺れながら見る夜景はここ数年間ほとんど変わりなく、駅周りにマンションがいくつか建ったくらいで、祥里と一緒に住むようになってからの日々の長さなんて半分麻痺していた。
でも、今日だけはその景色の一瞬一瞬がやけに焼きつく。
昼休みに有岡と話したことを思い返す。
三桁くらい経験人数がありそう、か。
確かにハヤテの過去なんて知らないし、自分がたった二回遊ばれただけで舞い上がっているのもわかってる。
わかってるよ。
それでも、三回目にすがってしまったから。
だから、祥里にバレてしまった。
それも情けないことに、久しぶりに見る祥里の体に興奮してしまった自分もいた。
ーこれが好きってことは、凛音はいじめられたいタイプだー
初対面の時にハヤテに言われた。
そうだ。
雑に扱われても喜んでしまう私の本性を、ハヤテは一目で見抜いていた。
そりゃそうだよ。
あんな勝気で見下すようなパフォーマンスのキャラに惚れてしまったんだから。
でも祥里にそれを求めていたなんて気持ちはなかった。
レスが始まってからは、まずはしゃぶれと言われるのもすごくすごく嫌だった。
でも今朝の違いはなんだろう。
断罪されているのが、興奮したのかな。
なんて、情けない。
裸で他人と抱き合ってきた数時間後に。
ふうっとため息を吐く。
欲求不満が爆発して、外に目を向けた。
それをきっかけに祥里が私に興味を戻すなんて、なんて、皮肉なんだろう。
冷めきってたんじゃないの。
それとも自分は良くて、私はダメなの。
ううん。
窓を流れ行く景色がスローになる。
そもそも……
夕日がチラチラとビルの間から照らしつける。
そもそも……
祥里は……
浮気していたの?
ゴオっと音を立てて反対方向に電車が過ぎていく。
視線は固まって西を向いたまま。
ここ数ヶ月を思い返す。
シャツについていた香水の香り。
脳をかき乱した長い髪の毛。
朝扉越しに聞こえた会話。
気のせいだけじゃ済まないこともある。
ーキャバでも飲み会でもくっつく可能性はあるー
違うよ、ハヤテ。
それだけのはずがない。
そうじゃないと、困る。
浮気じゃないとしても風俗は。
女性の気配があったから、こうなったんだよ。
なのに……
なんで、私は、今夜に少し期待してるんだろう。