ふざけた奴等
第3章 俺が俺であいつも俺で
「……どういうことだこれ」
真っ白な海岸。
砂は南国みたいにさらさらで、どこまでも海岸線が続いている。
異常なのは海の色。
薄いピンクが広がっている。
なんか、異様に気持ち悪いな。
水平線には、想像もできないほどの摩天楼が並んでいる。
近づいたら空も突き抜けていそうだ。
後ろを向くと黒岩の絶壁。
どうやってここに来たかというと、また早雪が「おいで」と囁いただけで飛ばされたらしい。
飛ばされた、か。
適切な表現だな。
「名倉お兄ちゃんの住んでる世界とはちょっと違うけど、ここにもお兄ちゃんがいるんだよね。それで困ってるの」
「日本語で喋れよガキ」
海風に備えて長いインド綿のストールを巻いた早雪が苦く笑う。
まあ、この世界にインドがあるかは知らないが。
「だから、見てもらうのが早いって。あそこに大きい工場みたいなのと船が並んでるでしょ?」
「ああ。見えるな。海ほたるみたいなでけえのが。なんか光ってるし。バザールっての? そんな感じ」
「ああ、そうか。それの方が正しいのかな。船着き場と市場なのね。で、まあ西港って呼ばれてるんだけど」
「とりあえず、あそこいけば良いのか?」
ザッ、と砂浜に踏み入れる。
水を含んで見た目よりも少しだけ硬さがある。
ピンクの海と青い空は似合わないな。
朝焼けだけ許されるコラボなんだろ。
「なんか、名倉お兄ちゃんて順応早いって言うか、反応薄いよね」
「こたろんみたいにはしゃげと?」
「あはは。高松お兄ちゃんは特別。こっちの方も凄いけど。笠羽お兄ちゃんは……まだ難しそうだね」
さくさくと砂を踏みしめながら歩く。
なんで港に飛ばしてくれなかったのかと思ったが、少しは状況把握に配慮してくれたんだろう。
ガキのくせに。
「ところでなんで俺ら三人なんだ?」
「んー。わかんない。カミサマも面白そうだと思ったんじゃない? お兄ちゃんなら」
「真面目に答えろ」
「うん。ボクもね、それ思ったよ。お兄ちゃん達連れてこいって言われたときに。なんでボクに押し付けるの? 他に適任いるのに。てか、なんで面倒な三人を選んだのかなって」
「お前だけじゃねーの? 妙なワープ使えんの」
「ああ。そこは秘密かな」
「おい」
そうこうしてるうちに、足元が明るくなってきた。
近くで見ると、でかい博物館みたいだな。
ライトを八方に照らして。