テキストサイズ

ふざけた奴等

第2章 慣れと飽きの境


 暑い。
 屋敷の二階、張り出した屋根の下空を見上げて手で扇ぐ。
 折角の土曜日だと言うのに出掛ける気すら起きない。
「坊っちゃま、シャーベットでも召し上がりませんか」
 襖が開いて喜寿を迎えた金が入ってくる。
 盆の上からメロンソーダが入ったグラスを受け取り、ストローに口つける。
「暇なんだけど」
 一気に飲み干し、空のグラスを床に放る。
 すぐさま拾い上げる皺が寄った手。
「そうでございますね、皆外に出ていらっしゃいますし」
 親はいつもいない。
 休みに一緒に過ごすなんて月一以下。
「あの、坊っちゃま」
「なに?」
「上に何か羽織ってくださいな。流石に裸はよろしくないかと」
「暑いんだもん」
 裸族。
 そこまではいかないけど、大体裸だ。
 外からは死角だし、特に来客もない。
 見られるとしたら金だけだし。
「私の心臓によろしくないので」
 目を逸らされると、無理にでも見せたくなるのが性ってもので。
 僕は金に近づいて顔に手を添えた。
 じっと見つめる。
「坊っちゃま?」
「いつもの暇潰ししようよ、爺」
 白い肢体を見下ろされるとぞくぞくする。
 手を首筋に下ろし、堅苦しい上着を脱がすようにずらす。
 これだけ誘ってるんだ。
 応えてくれてもいいじゃん。
「……熱中症にだけはご注意ください」
「それは爺次第だな」
 溶けかけたシャーベットが盆ごと床に落ちて飛び散る。
 カシスの赤い雫が畳に染みて。
「は、そういえば、あッ」
 肌を撫でる快感に言葉が続かない。
「なんでございましょう?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ