クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第4章 増援部隊ゾーナタ
ジョンは部隊長フレドリックに連れられて医務室へ向かっていた
他の職域ブロックと異なり医務室は居住空間に近い場所に配置されている
「フレドリックさん、グリメット軍って北海エリアを張ってたんじゃないんですか?
どうして黒海に?」
「さぁな、例の未確認の落下物の回収にでも駆り出されてたのかもな
トランキュリティ軍勢はひとつの軍隊じゃないことくらいは知ってるだろう?
トランキュリティの中でもゼントリックス軍とグリメット軍が牽制しているらしいから獲物の取り合いにでもなってるんだろ?」
「それはおかしいですよ、フレドリックさん!
ボクたちが出撃したときはグリメット軍は居なかったんだから!
ゼントリックスの奴らと警戒していたブルガリアのコートガード隊の小競り合いだけでしたよ!?」
「コートガード隊の小競り合いったって、お前
乗り込んでいたのは正規パイロットじゃなくて子供だったじゃないか!?
俺にはさっぱりだよ」
ふたりは話しをしながらも階段を上がり医務室に入った
中には女医のヴィクトリア・トルストイと数名の看護師たちが忙しそうにしていた
「あら? フレドリック、ジョン!」
「やぁ、ヴィクトリア!今日も一段と綺麗だな、戦場の前線部隊の艦には似合わないぜ?
例の子供はどうだい?
司令に言われて様子を見に来たんだ」
美人の女医は皆の憧れだ
「膝を擦り剥いてたくらいね、本人も落ち着いてるわ、でも詳しい事は何も話さないの
名前も、住んでる処も言わないのよ?」
「なんだよ、名前もわからないのか?
地上に連絡も出来ないじゃないか!?」
「うーん、言わないと言うか……、本人曰く、“個別の名前は無い”んだそうよ?
わけがわからないわね」
フレドリックは嫌な表情をする
「……ヴィクトリア、まさかだと思うけど…
“強化人間”だとか言わないでくれよ?
こんな前線で揉め事は困るぜ?
艦に疫病神が乗り込んだら皆ビビッちまう」
女医はパソコンのモニターを眺めながら溜め息をつく
「私だって“強化人間”を診たこと無いわよ!
ただ薬物を使われている様子は無さそうだし、情緒不安定ってことも無いわね……
だって“強化人間”ってそういうモノなんでしょう?」
厄介なものを拾ってきてしまったとジョンも溜め息をついた…
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