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時給制ラヴァーズ

第4章 4.センターラインを越えて

「えっとさ、慶人」
「なに」
「……やっぱそれ、そのまんまってまずくない?」

 慶人の部屋の入り口から顔を出せば、シンプルな部屋の中に場違いな段ボール。
 かなり浮いているし、不自然だ。
 しかもそれが全部新品となると、慶人が意気込んで買ったのに使えないで隠しているかなり可哀想な人みたいになってしまう。

 だって俺たちは設定上ラブラブなカップルなんだ。
 それなのにこれだけ買い込んだものがなにも手をつけられていないってことは、色んな意味で心配を呼びそうだ。むしろ親じゃなくても心配になる。

「えーと、それ、さ。ちょっとだけ、使ってみる?」

 ドアから顔だけ出して窺うように問う俺と、段ボール箱を見比べる慶人。
 結婚しろとうるさい両親を黙らせるため、男同士で付き合っているふりをするという、上手くいったら儲けものってぐらいの作戦。
 そのために買った小道具と、時給制の恋人の俺。

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