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ミニチュア・ガーデン

第6章 喪失した道

 ガルクとラークの遺書しかない世界は、ただただ苦しい。
 切なさと孤独と後悔が後から後から湧き出て、それが酷く胸を締め付けるからだ。重苦しい感覚に息が詰まり、突き刺さる痛みに涙が流れる。

 ラークは誰よりも知っていると思っていた。誰よりも信頼されていると思っていた。誰よりも彼に安心感を与えられていると思っていた。
 だが、彼は自ら命を断った。それは、ガルクがそう思い込んでいるだけだと示している。彼がガルクに言えない事で苦しみ、命を断つほど追い詰められていたと表している。
 それがなんなのか、ガルクには解らない。自分の何がいけなかったのか、その時どうすれば良かったのか。

 ああ、そうだ。聞けば良いんだ。とガルクは思う。
 あの時と同じ彼を創って、同じ状態になった時に訊けば良いのだ。「何を悩んでいるんだ?」「相談ならのるぞ? 一緒に考えよう」そう言って、彼の言葉に耳を傾ければ良い。そうすれば、彼を失ってしまった事実を受け入れられるかもしれない。そうなれば、この苦しみが和らぐかもしれない。
 彼は戻って来ないのだから、あの時の彼を知るにはそうするしかない。考えても、逃避しても理解できないのだから、細部まで再現すれば良いのだ。

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