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ミニチュア・ガーデン

第6章 喪失した道

 本を買って二人の居るトイレに向かうと、フェイクが何か話をしている声だけが聞こえた。一つきりのトイレで、他に人が来てあらぬ誤解を招いても面倒だ、とガルクは外で空くのを待つふりをして人が来ない様にする。
 十分程が経過し、ようやく二人が出て来た。
「ガルク?」
 扉を開けたフェイクが驚きの声をあげる。黙って待っていたのが意外だたったのだ。
 ついて出て来たラークは、ぼんやりと虚ろな目をして下の方を見たまま顔を上げない。
「帰るぞ」
 ふぃ、と二人から視線を逸らし、ガルクは家に向かって歩き出す。ラークは今はなんとか普通にしているだけで、本当はそこまで冷静ではないと知っているからだ。それはフェイクも一緒で、ガルクの気遣いに気づけない程、ラークの事を気にして見ている。

 帰りはラークのために水を購入しただけで、他はどこにも寄らなかったため、スムーズに家に到着した。
 テーブルにラークが欲しがった本を置き、ガルクは自室に入る。
 フェイクはラークをソファに座らせ、買って来た水を渡して飲ませる。震えなどはないが、その動きはぎこちなく、緊張しているのが見て取れる。

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