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ミニチュア・ガーデン

第1章 無

 最初がいつだったのか、彼にはもう判らなかった。
 心に残るのは甘美な一時と、それを失った絶望。独り残された寂しさは彼の目を曇らせ、現実から遠ざけ、より一層の深い孤独の中に落とした。

 彼は、今は恋人と共に甘い生活を営んでいる。
 恋人は美しいと言う形容詞の似合う人物である。
 腰まである真っ直ぐな銀髪と、芸術家が丹念に作り上げたかの様な顔が非常に印象に残る。細い眉も、大きな金色の瞳も、スッと高い鼻も、薄い唇も、全てが完璧に整っている。元々の体質と、成長期に置かれた状況のせいで、身長は女性にしては高く、男性にしては低い、と言った程度。長期に渡る栄養失調がホルモンバランスを崩したせいで、人並みに脂肪は付かず、骨格も骨自体も細い。
 そのため、相手に実際よりも小さく、か細い印象を与えてしまい、容姿端麗である事も手伝い、幻想的な雰囲気をかもし出す。
 容姿が完璧である一方、性格は掴みどころがない。
 普段の状態では、安定しない体調と精神の不安定さから、気分のムラが激しく、気分屋や気まぐれ、と言った面を多く見せるのだが、特定の事に対しては同じ反応を示したり、時間になると毎日同じ事をしたがったりした。

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