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ミニチュア・ガーデン

第1章 無

 朝、ラークは起こしにやって来る。実際は起きていると知ってるのだが、朝の恒例行事としてやって来るのだ。
「ガルク、ガルク」
 彼の中性的な声は耳に心地よく、起こしに来てもらうのを待っているのは、この気分の良い目覚ましを心待ちにしているからだ。
 目を開くと、そこには日の光を浴びて輝く銀髪に縁取られた美しい顔があった。大きな金色の瞳に映るのは、相手の姿。
 ガルクと呼ばれた人物の特徴を上げろと言われれば、筆頭は優れた体格である。二メートル近い身長と、厚い筋肉に覆われたがっしりとした骨格は百キロ近い。それに比べれば、顔にかかる程度の長めの金髪や、彼が好きだと言う明るい青色の瞳、白色人種特有の透ける様な白い肌など霞んでしまう。威圧感のない温和な雰囲気を醸し出す柔和な表情は、二の次になる。
「おはよう、ラーク」
 ガルクは手を伸ばし、ラークの細い輪郭をなぞる。
 この、陶器の様な肌に触れるには、自分の手は無骨で不格好に思えてならない。ガルクはそう思う。くすぐったがる様にその手に触れる細い手も、指はスラリと細く、爪の先まで手入れが行き届き、顔同様の滑らかな肌は、傷つきやすそうな程に繊細だ。

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