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ミニチュア・ガーデン

第4章 幸せへの崩壊

 オレンジ色の囚人服に身を包んだ彼は、まるで亡霊のようで、生気と言う物が感じられない。
 あれだけ美しかった銀髪は乱れてボサボサ、肌も荒れて吹き出物と傷跡だらけだ。細い首ですら、幾つもの大きな傷が刻まれ、ガルクは堪らず彼を抱き締めた。
「ごめん、ごめんラーク。居るなんて知らなかったんだ……」
 胸を貫く痛みに涙が流れ、頬を伝って細い肩に落ちる。
 彼を一時忘れようとこの世界を創った。そんな事が出来るはずがなかったのだ。彼を忘れる事も、彼のいない世界に生きる事も。解りきっていたのに、目の前の甘い逃避に没頭してしまい、大切な彼を絶望の闇に落としたまま、放置してしまった。
 彼は意識が朦朧としているようにどこか虚空を見たまま、動かない。この表情を、ガルクは知っている。以前の彼が教えてくれた。
『このまま消えたら良いなって、そう思ってたんだ』
 死ぬ事も許されず、痛みから逃れる為に他者を殺し、生きている事が重くのしかかり、罪悪感に全身が酷い痛みに苛まれたのだと、彼は言っていた。目の前にいる彼は、その時の彼よりも長い時間、そんな中に居た。ガルクが手を差し伸ばす事が無かったから、抜け出せなかった。

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