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ミニチュア・ガーデン

第4章 幸せへの崩壊

「良い子だった」
 無表情だった顔が歪み、今にも泣き出しそうな顔で彼は答える。掠れた声には罪悪感があり、ガルクですら、何故? と思ってしまう。
「じゃあ、どうして? 誰が殺したの?」
 彼女は優しく尋ねる。彼が犯人だと思っていないのだろう。新聞に詳細が載っていなかったのは、そう言った理由なのだろう。
「生きてても、苦しいから。苦しませたくなかった」
 写真から目を背け、彼は答える。
 意味不明な発言、とはこの事だろう。病気も怪我もない、健康な人に対して、苦しませたくなかった、と言う動機は矛盾しているとしか思えない。
 彼女は最初の、バラバラ死体の写真を再び見せて問いかける。
「どうして殺したの? この写真に向かって言って」
 動揺か、ゆらゆらと揺れる濁った瞳に向け、彼女は真剣な眼差しを向ける。対話可能まで戻った正気は彼女の言葉に従い、写真を見る。
「あ……やめ、て……こんな、の……」
 その瞬間、体を震わせて屈み、弱く拒否の声を上げた。この反応は初めてらしく、刑事も看守も驚き、戸惑う。震える体を看守の一人が摩ろうとして、大きく顔を引きつらせる。
「どうしたの?」
 刑事が尋ね、看守は彼をチラチラと見ながら、引きつった顔で答える。が、それでは何か解らない。

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