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真夏の夜の夢

第1章 幻夜


一応、流れの上で関係を持ってしまったことを
作家は詫びて風呂場の洗い場に土下座した。


勘違いしないでくださいましな
これは私からお願いしたことなのですから
作家先生様はひとつも悪くはないのでございますよ

そうだ!
こんな姥桜を気持ちよくしていただいたんですもの
食事にはお酒をつけさせていただきますわ


セックスと酒には目がないので
作家はいたって喜んだ。

他には客がいないと女将が言うように
本当に暇なのか付きっきりでお給仕を勤めてくれた

ほどよく酔いも回ってきたので
作家は再び女将と禁断の関係を結びたくなった。
女将の胸に手を伸ばすと
やんわりと拒まれた。


作家先生様は本当におなご遊びがお好きなようで…
でも、まだ宵の口でございますゆえ
今しばらくは私めの拙いお話に付き合ってくださいな…
全部で八つの物語がございます
その全てが終わった時に
作家先生様と私めは
心も体もひとつになれるはずでございます

ええ、拙い物語でございますわ
退屈におなりになって作家先生様は眠ってしまわれるかもしれませんが
この姥桜(うばざくら)の拙(つたな)い話をどうぞお聞きくださいませ
もしかしたら創作の良いネタになるやもしれませんしね


女将はそう言うと
部屋の灯りを消して
九本の蝋燭に火を灯した。

ユラユラと揺れる炎の灯りの中で
女将は物語を話し始めた。

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