テキストサイズ

波乗りの浜

第1章 波乗りの浜

 ②

『サーファーを殺すには、波が無ければいい』
 その真逆で、良い波がブレイクしていて、しかも無人であったならば…
 波乗りしない訳にはいかない。

 いや、少なくとも俺はそうなのである…
 そして父親は幸いにも命には別状がない…
 クルマの中にはサーフィン道具は載っている…
 目の前にはパーフェクトに近い台風スウェルが規則的にブレイクしている…

 そして何よりも一番の特筆すべきは、無人…

 誰も波乗りをしていないのだ…
 こんなサイコーなブレイクなのに、無人…
 奇跡、以外のナニモノでもないのである。


 そもそも、この海に近いから…
 と、いう理由で、二つ返事でこの地への転勤を快諾し、転勤してきた経緯もあった。

 少しだけ…

 30分、いや、1時間だけ…

 いや、1時間半だけ…

 いや、2時間だけ…

 いや…

 夕方まで…



「ふうぅ、やべぇや…」

 そして、一人で最高の波を…

 波乗りを…

 サーフィンを堪能していく…

「最高だ…」

 この今の時代に、こんな最高の波を独り占めできるなんて奇跡に近い…

 いや、奇跡でしかない…

「やべぇ…」
 思わず、感動の声が漏れてしまう。

岸から海を眺めるのと、海の中でサーフボードに浮かびながら陸地側を眺めるのとでは、もちろん陸側と海側という景色や方角の違いはあるのだが、根本的に違うのだ…
 そして、俺は、その風景が堪らなく大好きであった。

 海から陸地側を眺めると、本当に地球の丸さが感じられるのだ…
 いや、もちろん海側を眺めても水平線の丸さは感じられるのだが、海から眺める陸地側の風景は、そう、まるでパノラマ写真の様に見えるのである。

 そしてこの海岸は、少しの平地とその奥側にはずうっと続く深い山並みの連なりが見られるのだ…
 そして今は夏の終わりに近いとはいえ、まだまだ緑が深く、美しい。
 
 いい波…

 素晴らしい景色…

 心が洗われるようであった。


「おや…」

 すると、自分の止めているクルマの横に人影が…
 いや、人が座っているのに気付いた。

 夢中になって波乗りに没頭していたから、いつからいるのかは分からない…

 車上荒らしなのか…

「おや…」

 だが、よく見てみると…

 女?…

 女の子?…

 ん、女子高生か?…

 JKか?…




ストーリーメニュー

TOPTOPへ