テキストサイズ

『エリーゼのために…』

第1章 エリーゼのために…

 162

 僕は帰宅し、服を着替え、そして鏡の前でふと思い出していた。

 ○○ショッピングモール…
 初めて女装して葵さんと出掛けた場所であり、ドキドキして心臓が破裂しそうだったと。

 そして鏡に映る自分の姿を見てついこの前までは…

『どんなスカートを履こうか?』

『どんな感じにお化粧しようか?』
 まるで、いや、女の子そのものの想いに昂ぶっていたんだった…
 そう、想い浮かべていた。

「ふぅぅ」

 そして鏡に映る自分の顔を見ると…
『それまでは中性的にキレ可愛い感じだったのが、夏休み明けの今日…
 カッコいい、キレイな男の子に変わって見えて…』
 さっきの舞香ちゃんの言葉が脳裏に浮かんできたんだ。


 中性的なキレ可愛い男の子から、カッコいい、キレイな男の子かぁ…

 でも確かに、少し、男っぽくなったかも?…

「ふぅぅ」
 再びため息を漏らす。

 確かに舞香ちゃんの言う通り、まさにいい得て妙と云えるかもしれない…

 なぜなら…

『中性的な…』
 は、葵さんの影響により、女装をし、心から、おちんちんのある女の子化していて、男の子として振る舞う事すら違和感を感じた時期とピッタリ重なるから。

 そして今日…

『カッコいいキレイな…』
 は、葵さんがいなくなって、約10日間女装できなくなり、嫌が応でも男の子として過ごさなくてはいけなく、また、過ごしてきた結果の変化、いや、元の、本来の、ノーマルな男の子としての自分に戻った…
 という現実であったから。

 そんな事を考えながら、Tシャツに薄いストライプの半袖シャツをはおり、ジーパンという、いつもの男の子としての姿を鏡で見ながら…

「あれ?」

 本当に、少しだけ男の子的な顔に変わった、いや、戻ったかもしれないなぁ…
 そう感じたんだ。

 葵さんと離れて…

 女装を、おちんちんのある女の子になれなくなったから…

 そして、心の中の男の子としての違和感も薄れてきていたからなのか?…

 鏡を見ながらそう思う。

 ピンポーン、ピンポーン…

 舞香ちゃんが来た…

 平日は、両親が共働きだから自分以外らいない…

 僕は急ぎ、二階の自室から階段を降りて、玄関を開ける…

「あっ」

 そこには、凄く可愛い、ボーイッシュな舞香ちゃんが立っていて…

 僕は思わずドキンとしてしまう。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ