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ソルティビッチ

第1章 ソルティビッチ…

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 プルプルプル、プルプルプル…

 わたしはマンションのエントランスに歩きながら、駿にダメ元で電話を掛ける。

 コツ、コツ、コツ、コツ…

 エントランスホールの大理石の床にわたしのハイヒールの音が響き…

 そして…

 ブー、ブー、ブー、ブー…

 スマホの呼び出しのバイブの震動音が…
 聞こえてきた。


 すると…

「あ、えっ…」
 
 エントランスホールの角を曲がり、エレベーター前に…

 ブー、ブー、ブー、ブー…

 スマホを手にした女性が…

 イヤ…

 駿が…

 立っていた。

「あっ、し、駿…」


 すると駿は…

 いや、美しくキレイな女性が…

 わたしの方に顔を向けてくる。

 ドキッ…

 わたしはその美しくキレイな駿と、いや、その女性と目が合った瞬間に…

 ドキンと心を震わせ、ううん違う…

 ときめかせてしまい…

 その妖艶な魅力に一気に魅了されてしまったのだ。


「し、しゅん…」

「あら…見つかっちゃったわ…」

 その声は、ややハスキーではあるが、正に女性そのものの声…

 この前の駿の声とは全く違って
いた。


 それに右手の薬指のクロームハーツのダガーリングと、あの目を確認しなければ…

 全く別人の…

 見知らぬ…

 そして、ホンモノの女性にしか…

 見えない。



「し、しゅん、ど、どうして…」

「いえ…

 わたしは『しゅん』でなくてよ、悠里…」

「え?…」


「わたしは…
 
 『葵、あおい』なの…」

 駿は、いや、葵は…

 そう囁いてきた。


「え…あおいって?…」

 心がザワザワと騒めいていた…

 あおい…

 葵…

 
 

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