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第9章 『茂木純二と真奈美』
純二の言葉に、真奈美が
ううう~んと唸り声をあげて、
首が肩に引っ付きそうな程傾けると。
『内藤のおじちゃん…来なくなった、
あそこの、お肉屋さんのおじちゃん…』
真奈美がそう言って市営住宅の
公園から見える
お肉屋さんのある方向を指差した。
『で、お母さんは…元気してんのか?』
『お金…貰ったって、
ステーキ食べさせてくれた』
『それは、お前の弟が
家から…居なくなった辺りか?』
純二の問いかけにこくりと、
真奈美が首を縦に振った。
純二が胸のポケットから
煙草を取り出して火を付けると。
ふぅーっと遊具のリスの上に座って
空に向かって紫煙を吐き出した。
真奈美がその紫煙を見上げると、
消えた煙の先に
雲が流れていくのが見えて。
空を指差しながら真奈美が、純二に。
『茂木おじさんの煙草…の煙、
雲になっちゃった…』
『来年…になりゃ…小学校だろ…?
帰ったら…お母さんに言っとけ…、
茂木のおじさんが真奈美の
給食費出してやるって言ってたってな。
後…これ…やる。
この辺りで子ども食堂やってる奴がいる。
ここから…そんなに遠くないし、ここで
一人で居るより…マシだろ…、
母ちゃんには…そこで待ってるって
今度から言えばいい』