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煌めく波濤(はとう)

第1章 煌めく波濤(はとう)

 16

 あ、そうだ、碧は全日本ジュニア代表なんだっけ…
 昨夜検索して知り得たその情報を、すっかり忘れていたのだ。


「わたし、このサーフボード借りていいかな?」
 すると俺の三本のサーフボードの中から、中サイズのボードを指差して訊いてきた。

 波のサイズの大、中、小…

 波の崩れ方、ブレイクの質感…

 それら様々な変化と違いによって三本のサーフボードを使い別けているのだが…

 碧はその三本のサーフボードの中から中間サイズのボードを選んだ。

「純のサーフボードはさぁ、少しわたしには浮力があり過ぎる感じだったから、この波のサイズアップでちょうど良くなったかも…」

 うわ、さすがだ…

 昨夜、碧を抱いた感覚では、俺と約15㎏以上は体重が違うと思われる…
 だから、当然、浮力も碧には合わないのだが、波のサイズアップによりその浮力の差がギリギリ丁度よくなった。

「今日の純は、このボードがいいんじゃない?」
 そして碧は、俺の中での長さも浮力も一番あるサーフボードを指差したのだ。

 さすがだ…

 サーフボードは波が大きくなればなる毎に、長さと浮力が重要になってくる。

 それをパッと判断した碧は…

 やはり全日本ジュニア代表レベルなんだ…
 そしてその思いは、海に入ってすぐに理解できた。

 サーフィンは、波が大きくなればなる程に沖に出る(ゲッテイングアウト)のが大変なのである…
 そして、まずは、そこに技量の差が露わになる。


 だが碧はアッという間に沖に出て…

 俺が苦労しながら沖に出る間に…

 すぐにサッと、波に乗った。

 巧く、波のピークを掴まえ、軽々とテイクオフ(波に乗る事)し…

 綺麗なボトムターン(波を滑り降りてターンをし、波の上へと向かうワザ)を決め…

 瞬く間のスピードで波の上(トップ)へと駆け上がり…
 
 その波のトップ(頂上)でキレのある切り返しのターンをし…

 再びボトム(波の底)へと降りていく…

 サーフィンとは基本波の頂上から底辺へ(トップからボトムへ)と降りながら加速をし、そのスピードを維持しながら再びトップへと駆け上る…
 まずはこの一連の動きが基本であり、プロレベル以上の上級サーファーになればなる程に、この一連の動きが素晴らしく美しいのだ。

 そして、碧も間違いなく…

 美しかった…



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