真夏の夜の夢…
第1章 真夏の夢の夜…
「おかわりは…
奢らせてください…」
男が問うてくる。
「うーん、どうしようかなぁ…」
観戦中はビールを2杯飲んだ、そしてカウンターに座り直してマティーニで3杯目…
わたしはお酒は好きだが、強くはない…
だから、次のお酒がある意味、今夜の分岐点となるのは分かっていた。
にこやかな笑顔で男はわたしを見てくる…
決して嫌いなタイプでは無い。
どうするか…
この次の、4杯目のお酒次第で、この後の、今夜の流れが左右する…
少なくともわたしの中ではそう考えていた。
うーん、どうするか…
すると、男の視線がわたしの左手の薬指を見つめてくる。
そして男の左手薬指にも光るモノが…
「わたし…これでも人妻なの…」
そう囁く…
「ふ…人妻…
なんて魅力的な響きなんだろう…」
すると男は、サラっと、そしてスムーズにそう囁いてきたのだ。
「あ…」
そして、わたしの薬指に軽く触れてきた。
合格かも…
わたしの心は一気に昂ぶってしまう。
「せっかくだからいただくわ…
『スクリュードライバー』を…」
そうバーテンダーにオーダーをする。
「はい、かしこまりました…」
すると、そのバーテンダーの目が一瞬、意味有り気に光った気がした。
あ、このバーテンダーは分かっているかも…
なぜならば…
『スクリュードライバー』
のカクテル言葉は…
「心を奪われた、惹かれる」等の意味があるから…
「光栄です…」
すると男は嬉しそうに囁き…
「シェリー酒をショットで…」
と、オーダーした。
「ふうん…」
わたしは、そんな隣の男を横目で眺め、思わずそう吐息を漏らしてしまう。
なぜなら、シェリーのカクテル言葉は…
「今夜は全てを捧げます」
なのであるから。
なかなか洒落た男なのかもしれないな…
更に疼きも昂ぶってきた。
そしてわたしは心を疼かせながらも、その男の薬指のリングに触れる。
「わたしも…嫌いじゃないわ…」