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約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever

第12章 Full Moon

「お父さん、お母さん、さようなら」
 最後の別れの挨拶だけは韓国語ではなく、日本語を使った。でも、多分、生まれ育った国の言葉を使うのはこれが最後になるはずだ。
 今となっては、父母にたった一度でも聖泰を見て貰ったこと、彼等に孫の死を知らせずに済んだことだけがせめてもの救いであった。
 親不孝な娘であることは判っている。でも、莉彩はこの時代で生きてゆくことを自らの意思で決めたのだ。
 愛する男と生きてゆくことにもう迷いはない。
 莉彩の前髪に落ちたひとすじの髪が川面を渡る風に揺れた。

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