
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第12章 Full Moon
臨莉彩は第九代朝鮮国王徳宗の寵愛を独占したといわれる女性である。だが、何故か、徳宗の后妃一覧に臨莉彩の名は残っていない。徳宗の死後もなお生き存えた莉彩は、都から離れた山奥の寺に籠もって尼となって晩年を過ごしたと伝えられる。
徳宗は生涯を通じて子宝には恵まれなかった。ただ一人、夭折した王子が存在したとされ、実際、死後、追尊された(生前には王子として認められなかった)王子泰徳山君の名が記録に見られるが、王子の生母、出生についてはいまだに謎である。
徳宗の寵愛を一身に集めた、ただ一人の側室である臨莉彩が泰徳山君の母だとする説もあるが、真偽のほどは定かではない。一説には莉彩は自ら望んで記録から自分の存在を示す記述の一切を抹消したと伝えられる。
正史に名前が残っておらぬ以上、臨莉彩の存在が果たして実在の人物であったかどうかは疑わしいが、徳宗王の時代に生きた吏曹判書孫東善が私的な日記に、〝臨淑容〟即ち臨莉彩の名を書き残しているのだ。
東善は徳宗王の比類なき友人であり、また、臨莉彩が彼の祖父の養女となったいうのが事実であれば、莉彩にとっては義理の甥という立場になるから、かなり信憑性の高い記録ともいえる。
目下のところ、臨莉彩の存在は、あくまでも伝説上のものとして捉えられているにすぎないが、その存在を主張する歴史家も数多くいるのは確かである。
一国の王の寵愛を専らにし、王子まで儲けながらも、歴史に名を残すことなく、その闇の底に沈んでいった臨莉彩。
彼女の心のあやを知るすべは、はるか後世に生きる我々には最早ない。
更に臨莉彩が生きた時代よりはるか時を経た二十一世紀の日本で、安藤莉彩という一人の女性が三度目の失踪の後、ついに永遠に消息を絶ってしまったことも。
(完)
☆ Special Thanks to。。。
莉彩の14年間に及ぶ長い恋が漸く実りました。彼女の決断は、いかがでしたでしょうか?
長らく、莉彩の成長をみまもって頂きまして本当にありがとうございました! 作者より ☆
徳宗は生涯を通じて子宝には恵まれなかった。ただ一人、夭折した王子が存在したとされ、実際、死後、追尊された(生前には王子として認められなかった)王子泰徳山君の名が記録に見られるが、王子の生母、出生についてはいまだに謎である。
徳宗の寵愛を一身に集めた、ただ一人の側室である臨莉彩が泰徳山君の母だとする説もあるが、真偽のほどは定かではない。一説には莉彩は自ら望んで記録から自分の存在を示す記述の一切を抹消したと伝えられる。
正史に名前が残っておらぬ以上、臨莉彩の存在が果たして実在の人物であったかどうかは疑わしいが、徳宗王の時代に生きた吏曹判書孫東善が私的な日記に、〝臨淑容〟即ち臨莉彩の名を書き残しているのだ。
東善は徳宗王の比類なき友人であり、また、臨莉彩が彼の祖父の養女となったいうのが事実であれば、莉彩にとっては義理の甥という立場になるから、かなり信憑性の高い記録ともいえる。
目下のところ、臨莉彩の存在は、あくまでも伝説上のものとして捉えられているにすぎないが、その存在を主張する歴史家も数多くいるのは確かである。
一国の王の寵愛を専らにし、王子まで儲けながらも、歴史に名を残すことなく、その闇の底に沈んでいった臨莉彩。
彼女の心のあやを知るすべは、はるか後世に生きる我々には最早ない。
更に臨莉彩が生きた時代よりはるか時を経た二十一世紀の日本で、安藤莉彩という一人の女性が三度目の失踪の後、ついに永遠に消息を絶ってしまったことも。
(完)
☆ Special Thanks to。。。
莉彩の14年間に及ぶ長い恋が漸く実りました。彼女の決断は、いかがでしたでしょうか?
長らく、莉彩の成長をみまもって頂きまして本当にありがとうございました! 作者より ☆
