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冴ゆる月(Winter moon)

第8章 いい女2 惜別…

 ④

 ところが…

 そんな親友である彼女が、クルマ屋という職業の…

 つまりはわたしに、新しい出会いの為にと1週間後に男を紹介してくれるという話しが決まった次の日…

 なんとわたしの愛車…

 92年式…

『アルファロメオスパイダーヴェローチェ』
 の、エアコンが壊れてしまったのだ。

 今日はたまたま彼の月命日と休日が重なったので…
 生前、よく二人で通った海岸沿いの、素敵に歳を経たマスターのいるカフェへと一人ドライブに出掛けたのである。

 その帰り道…

 エアコンが…壊れた。

 季節は初夏…

 とはいえ、昨今の異常気象の影響なのか、すでに連日の30℃超え…

 そして、実は、オープンカーとは…

 直射日光を浴びるのだ…
 屋根が無い分、陽射しが直射で当たるのである。

 夏の陽射しの直射…

 それはかなりの熱さと、暑さ…

 だからオープンカーとはいえ、エアコン全開にしなくては耐えられない。

 ちょうど真夏にバイクを乗るのと同じであろう…

 そして…

『あぁ、コンプレッサーが限界ですねぇ、そろそろヤバいかも…』
 いつものクルマ屋さんが、半年点検時にそう云っていた。

『エアコン壊れたら…高いっすよぉ』
 そうも云っていた。

 なぜにこのタイミングなのか?…

 わたしは帰り道…

 このエアコンの壊れて効かない愛車に乗り…

 大通りの渋滞にハマり…  

 ジリジリと容赦なく照り付けてくる太陽の陽射しを浴びながら汗を滲ませ…

 この故障のタイミングを考えていた。

 さすがに7年も経ていたので、最近の月命日はお線香を上げる程度に留めていたのだが…

 たまたま友達とこのクルマの事や、彼の事…

 そして、新しい男を紹介する…
 という話しをしたし…

 それに偶然、月命日と休日が重なったから、ふと、彼との昔を懐かしみ…

 一人ドライブに出掛けてのこの故障のタイミング…

 何かの意味があるのか?…

 しかも…

 エアコンが壊れたらもう限界かな…

 そうとも思っていたから…

 この故障のタイミングの事を考えてしまう…




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