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ビッケ

第1章 ビッケ…

 ⑤

「わたしと…したいの?…」

 もう一度問う…

「は、は…はい、し、したい…です…」
 そう言ってきた。

 そしてわたしは、もう、完全にエス的な思考と衝動に支配されていた…

「ふうん…」
 だが、まだ、わたし的なポイントがひとつクリアできてはいなかったのだ。

 それを問う…

「ねぇ、和哉くんはさぁ…」

 仕事は何をしているのかなぁ?…

「え…あ、はい…」

 そうひとつのポイントは…
 仕事であった。

 なぜなら、こうした行きずりのワンナイトの関係は…

 よほど酔い痴れ、泥酔気味じゃない限りは…

 やはり、次の日からが…

 怖いのだ。


 例えば病気…
 これは既婚者であるならさほどの心配はない。

 例えばストーキングの類い…
 既に、既知の間柄ならまだしも、この和哉くんとは一応、バスケットという線では結ばれてはいるのだが、まだ、完全には身分は証明されてはいない。

 さすがに免許証を確認するなんて興醒めしてしまうし…
 だから冷静に目を見ながら職業を問うのだ。

 目を見れば嘘くらいは見抜ける自信もあるし…

「し、仕事ですか?」

「うん、そう…」

「はい、○△市役所の国体準備室にいます」

 和哉くんはすぐに、そしてそのわたしの心に引っかかる不思議な目を向けて…
 はっきりと云ってきた。

「○△市役所なんだ…」

「はい、大学卒業して入所しました」

「そう…うん、合格よ…」

 市役所ならば…

 公務員ならばさほど心配は無いだろう。

 それに和哉くんの目には、嘘の揺らぎは感じられなかったから…

 
「え、合格って…」

「だから、合格よ、ヤラせてあげるわよ…」

「え、あ…」

「わたしだってさ、色々あるのよ…」

 そう色々あるんだ…

 今夜のキミは、和哉くんはタイミングがよかったんだ…

「あ、ま、マジっすか」

「うん、マジっす…」
 さっきまでの緊張気味な顔が一転して、嬉しそうな笑顔になった。

「あ、でもさ…」

「え?」
 
「三回できる?」

「え、さ、三回すか?」

「うん、三回、三回以上…」
 わたしは笑みを浮かべながら問う。

「あ、は、はい、できるっす」

 若いから…

 質より量を、回数を…

 腐れチンポでなければよいが…





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