ビッケとビッチ
第4章 11月30日の夜…
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わたしは18時に仕事を終わらせ、急ぎ帰宅し、シャワーを浴びる…
そしていつもの様にノーパンに黒い、限りなく薄い、そして艶やかな光沢のあるセクシーなイタリア製のストッキングを穿き…
ボディラインが強調されるピタッとしたニットの膝丈のワンピースを着て、上に紫のソリッドワンボタンコートを羽織り…
カツ、カツ…
と、ハイヒールを鳴らして、マンションから徒歩5分の待ち合わせのバーに向かう。
時刻は待ち合わせの21時より、1時間以上早い19時45分なのだが…
なんとなく和哉くんは、もう来ている様な気がしていたのであった。
「いらっしゃいませ…」
いつもの行き着けのバーのドアを開け、薄暗い店内を一瞥する…
「あっ…」
すると和哉くんの声が聞こえた…
このバーは入り口から入り、正面に逆L字型の8席のカウンターがある。
そしてそのカウンターの右側の奥に和哉くんは座っていた…
「悠里さん、今夜は早いですね」
と、店長でありバーテンダーの彩ちゃんがそう声を掛けてきた。
「うん、ちょっとあのボクと待ち合わせでさ…」
そうわたしはスカし気味に呟き、和哉くんを見る。
「へぇ、そうなんですかぁ…」
彩ちゃんの目が…
ふうん、今夜はこのボクが相手なんですねぇ?…
と、語り掛けきているように見えていた。
「あら、早いわね、まだ1時間以上も前よ」
「あ、いや、待ちきれなくって…
それになんとなく悠里さんが来ているように思っちゃって…」
と、立ち上って答えてくる。
「あらぁ、かわいい子ね…」
と、彩ちゃんがその和哉くんの様子を見て呟いてきた。
「うん、そうなの…かわいいのよ」
わたしは彩ちゃんとしか分からないアイコンタクトで、そう応える。
「ふぅん、あ、悠里さんはいつもので?」
「あ、うん…あと何かある?」
「はい、今夜はチーズオムレツ作れます」
「じゃ、それでお願い…」
和哉くんは、そんな彩ちゃんとわたしのやり取りを…
唖然とした表情で見ていた。
「あら、今夜はスーツなんだね」
そう声を掛ける…