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　1

「ハイ
…」
　わたしはイタリアンレストランに先に着いた和哉くんの席へと案内され、そう彼に声を掛けた。


「あ、悠里さん、こんばんは」
　すると、和哉くんは立ち上って挨拶をしてくる。

「ちゃんと時間前に来ていてよろしい」
　そんな冗談口調の笑顔でそう褒めた。

「あ、はい、それは、もう当然す」
　和哉くんも笑顔でそう返してくる。

「あぁ、お腹空いたわぁ…」
　そして自分の気持ちを誤魔化す意味でもそう呟いた。

　何を誤魔化すのかって？…

　それは…

　この和哉くんを目の前して感じている…
　高ぶる、昂ぶる、心の想いである。

　だってこの立ち上って挨拶してきた様子が…

　この満面な笑みが…

　この嬉しそうな明るい声が…

　本当にかわいい…

　わたしの心を速攻で射抜いてきたから。

　ヤバいわ…

　心が揺れる…


「いらっしゃいませ」
　だが、そのタイミングで店員がお冷やとメニューを持ってきた。

　そんな間が、わたしの心をスッと落ち着かせてくれたのだ…
　そしてわたし達は食事をする。

「アンティパストです」
　コース料理が運ばれ、穏やかに食事をしていく。

「今日は練習だけだったんすか？」
　と、彼は話し掛けてきた。

　見た感じ、いくら一昨夜寝た、いや、セフレ契約を交わした関係になったとはいえ…
　和哉くんはかなり緊張しているようであった。

　そしてそれはわたしも同じであったのだ…

　既に一晩寝た関係とはいえ、今夜が二回目であり…

　全てが二回目、二晩目であり…

　ほぼお互いに何も知らず…

　いや、彼の方が教師時代のわたしを少しだけ知っている程度であるだけだから…
　お互いに緊張するのは当たり前といえる。

　そんな感じで、お互いに手探り的な会話を始めていく…
　そしてわたしは昂ぶる心も感じていた。

　それは、まるで、恋心の始めの頃の昂ぶり的な感覚にも似ていた…