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ビッケとビッチ

第2章 11月19日日曜日午後5時~

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 恋心…

 それはそうである…

 いくらセフレ契約を交わしたとはいえ…
 その裏側には好意という想いがあるから。

 嫌悪感を少しでも抱いてしまったら、セフレ契約なんて成り立つ筈がないのだから…

 そして男と女の関係であり…

 肉体関係を、肉体同士を交えていく訳でもあるのだから…
 好意が恋心に近くなくてはそんな簡単には割り切れるモノではない。

 特にわたしは和哉くんとは一昨夜が初対面といっていい。

 そしてたまたま彼の目が、昔飼っていたペットの『ビッケ』に似ていたから…

 大好きだった『ビッケ』に似ていたから、無意識の内に彼の目に魅きよせられ、魅かれ、惹かれ、それが初対面という心の壁を…
 警戒心を緩めさせたのだと思われる。

 だが、まだ、あくまでも一晩寝ただけであり…
 そんな警戒心が緩んだだけで、お互いに、いや、わたしはまだ和哉くんの殆どを知らないのだ。

 しかし、既に一夜の肉体関係、いや、セックスは交わした…
 
 そしてそのセックス的な相性、感覚は好意を感じられ、それがまた、更にわたしの心を昂ぶらせてきていた。

 それになにより、わたしの中の大好きだったペットの『ビッケ』という存在感の高まりを感じさせてくるのだ…

 だから、この食事を…

 食事での会話が…

 そして和哉くんからの手探り的な会話により、更にお互いの警戒心を緩め、和ませなくてはならない。

 また、そんな手探り的な会話や、ぎこちなさが…

 恋心に近い感覚ともいえ…

 わたしの心を昂ぶらせてきていた。

 だけど…

 決して恋心ではないのだ…

 好意なのだ…

 そしてその好意の裏側には…

『ビッケ』という過去に存在したペットに似ている、いや、そっくりな感情の目をしてくる…
 だから彼に魅かれた、惹かれたのだという大前提がある、いや、存在しているのである。

 だから、この恋心すれすれの好意の想いに流されたり、飲み込まれたりしては絶対にいけないんだ…

 わたしはこの和哉くんとの食事の最中に、そう、必死に自分に言い聞かせていたのであった。
 
 だけど、この食事、会話は、この後の…

 セフレという関係の緩和剤としては、今は、いや、今夜は…
 必要なのだ。
 



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