素敵な飼い主様
第4章 ダンスパーティー
少し息を乱している、彼の吐息が首にかかる。
彼の大きな手があたしの目を覆っていて、涙が手と頬の境界線で止まる。
「失礼ですが、彼女を返していただきますね。椎名さん」
「「ふ、藤林さん?!」」
二人の驚いた声が聞こえた瞬間、神矢は身体を反対側に向け、早歩きでそのままの体制で歩いた。
あたしは、引きずられている状態だ。
「泣くんじゃねぇよ。あんたらしくない」
「ヒッ・・・神・・やっヒクッ」
「ったく、手のかかる犬だな」
音楽がだんだんと遠ざかって、会場を抜けたのを知る。
ごめんなさい、神矢・・・。
神矢がいなかったら、きっとあいつらの前で泣いていた。
不器用ながらも優しい神矢の優しさに、初めて触れた瞬間だった・・・。