素敵な飼い主様
第6章 執事の北条さん。
ゆっくり近づく。
紅葉の木へと、ゆっくり。
ゆっくりゆっくり。
ゆっくり引き返そう。
「お待ちください紫苑様」
その声が聞こえた瞬間、あたしは首根っこをつかまれ、あっけなく身動きがとれなくなった。
そして、これから起こるかもしれない出来事を考えると、顔がサァッと青くなる。
「ひえぇぇ!!どうかこのことは神矢には内密にぃぃぃぃぃぃ!!」
「ばれたくないのなら、お静かにしてくれませんか」
知的な顔は、呆れたかのようにゆがんだ。
「す、すみません、北条さん・・・」
そう、北条さんが珍しく服装をゆるく着ており、リラックスモードで紅葉の木に寄りかかっていたのだ。