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ぼくはキミを追い払えない 〜エクソシズム†ロストコロニー

第2章 ファ・ユィリィ


フィルは広い展望デッキに居た


強化ガラスの向こうは真空の宇宙空間
よく見れば星の瞬きが見れるものの、ほとんどは漆黒の闇の世界のように思える

“こんな真っ暗な宇宙空間を眺めるための展望デッキなんて意味があるのだろうか?
 これならウェールズから見上げる夜空のほうがよっぽど素敵だと思うけどな”


視界に大きな建造物が見えてくる
いやフィルが立っている場所のほうがゆっくり回転しているのだ
視界に見えているのはスペースコロニー〈グリプス〉サイド7で最初に作られたコロニーだ
今は軍事基地になっている


フィルたちが暮らす〈グリーンノア〉はおもに民生コロニーで多くの民間人が労働者として流入して来ていた


フィルは慣れたように画面を操作して隔壁エレベーターに乗り込んだ
コロニーの外壁沿いのレールを走るトレイン代わりになるものだ


“今日の先生はレセプションスクールへ向かってるんだっだっけ?
 じゃあ降りるステーションはまだまだ先だな”


フィルは宇宙空間の景色には興味なく背を向けてソファに腰掛けた


“だいたい十字架を忘れるなんて先生も先生だよ、よく神父が務まるよな”


フィルは教会から頼まれたお使いに不満げである


田舎から飛び出したフィルは恩師マックスの勧めもありフリードキン神父を探してこんなに遠くまで来てしまった
確かにフリードキン神父は面倒見が良い人間で彼を慕って人が集まっていた
彼から儀式の技術を学ぼうと懇願したが受け入れられず代わりに此処で学びなさいと言われて居座る羽目になってしまった


まぁ宇宙まで出て教会に携わる人なので他の司祭よりも行動力がある人なのだろう、とフィルは割り切っていた


ふと外へ視線をずらすと目の前の〈グリプス〉に船が到着する光景が見えてきた


“この宇宙時代になっても信仰は大切なんだろうな”

フィルはいま神の仕事に携わるべきかどうか悩んでいた
だが過去の親しい人との別れが彼には忘れられない
このまま何もなかったかのように暮らせない
彼はまだまだ過去の後悔にとらわれているのだった…





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