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ぼくはキミを追い払えない 〜エクソシズム†ロストコロニー

第2章 ファ・ユィリィ


その日フリードキン神父は地球のヴァチカンに報告するため病院をあとにした


リンダは残る事を告げたが、フリードキンは何も言わなかった


病院の許可をもらいフィルの横のベッドを借りることになっていたリンダだが、寝付けずにいるとフィルが抜け出そうよ、と誘ってきた


巡回の看護師たちを交わして、ふたりは病院の屋上に出て夜空を見上げた


スペースコロニーの天空は夜の時間は照明を落とす

夜空に見える光は星ではなく、シリンダーの遠く向こうの街の灯りなのだ


「今日はタイヘンだったね、リンダ」

「悪魔祓いなんて初めての体験だったわ!」

口々に言葉を交わしていったが、やがてふたりは口数が少なくなっていく


言葉は要らなかった


フィルはリンダに初めての口づけをした


深夜の屋上でふたりは照れていた




そのとき



突然、リンダの身体が空中に浮き始めた!

「リンダッ!?」

「助けてッ!」


すると二人の前に黒い霧が立ち込めてきた

病院のすぐ向こうの空の上に

ひとりの少年の姿が浮かび上がってきたのだ


「デミトリッヒかッ!」


男の子はニヤリと笑った


「はじめまして、フィリップ
 いや2回目かな、ブラッディを追い払ってくれたそうでね、キミに挨拶をしようと思ってやってきたんだ」


「キミは何者なんだッ!?」


「ふふふ、皇子だよ、この世に仇なす者さ
 ブラッディは当分使い物にならないようだ
 かなり魔力を失ってしまったからね
 代わりに彼の魔力の糧をいただきに来たんだ」


すると、リンダの身体はますます上空高くに舞い上がっていった

「やめろ、何をする気だッ!」


突然、黒い霧は四散して消えてしまった


その瞬間、リンダは絶叫とともに上空から病院の駐車場まで落下してしまった


「リンダーー!!!」


金網越しから見下ろす彼女の姿はとても悲惨なものだった……


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