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アパート

第5章 生い立ち

それから2週間くらい、沙耶香と会うことはなかった。

出かける時と帰って来た時はドアの閉まる音と車のエンジン音で何となく分かる。

沙耶香の仕事は、介護で勤務先は特別養護老人ホームなので、夜勤もある。シフト制なので、勤務時間も休日もバリエーションが多く、土日祝日でも普通に仕事だ。

土曜日の今日は、僕は休みで家にいた。沙耶香も家にいるようだ。

僕は、日中家の中でテレビを見て過ごし、午後3時くらいから外に出て、玄関先に座って本を読んでいた。ペットボトルのコーヒーを脇に置いて飲みながら。

僕は、沙耶香に会いたくて出てくるのを待っていたのだ。

1時間くらい経っただろうか?103号室のドアが開き沙耶香が出でてきた。

僕は、その沙耶香の姿を見て驚いた。

しっかりとメイクをして、派手な顔になっている。いつものナチュラルなメイクでも地味目ではあるが可愛いと思っていた僕だが、その可愛さにビックリした。女性は、メイク一つで印象がガラッと変わるのだと実感した。

それにもっと驚いたのは、服装だ。下は紺色のレギンスに上は体にフィットした体の線が浮き出るグレーのTシャツ。お腹が少し見えるくらいの長さだ。

沙耶香は、身長も低く、体型的には丸みを帯びた感じで、男から見て少しポッチャリという体型だ。太っている訳ではない。体にフィットしたTシャツ姿を横から見た時の突き出た胸と、後ろから見た時の、尾てい骨当たりに見えるTの字が浮き出るパンティーラインと、お尻の質感がハッキリ分かるプリっとしたレギンスを穿いたお尻。

驚きのあまり、通り過ぎる沙耶香を一瞬で観察している僕がいた。

沙耶香が通った後には、シャワーを浴びた後のような、シャンプーかコンディショナーのような香りがする。

沙耶香は、僕がいることに気が付いたようだが無言で車の方へ歩いて行った。

僕は、

「どこに行くの?」

と聞くと、沙耶香は振り返りもせず、

「ちょっとそこまで…。」

と言って車に乗り込むと、僕の方を見ることなく駐車場を出て行った。


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