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一夜限りでは終わりたくない

第2章 曖昧な関係


「牧野さんからは…何もされていません…大丈夫です。」

牧野にされた本当のことなど言えるはずもない。

「そうか何もされずによかったな…それと気になっていたのだが、会社で皆がいる前では仕方ないが、それ以外は藤堂副社長と呼ぶのは止めてくれ…ベッドでは翔也と言ってくれただろ…奈々…」

突然ベッドの中での話をされて顔が熱くなる。
さらに“奈々”とあらためて名前を呼ばれると、くすぐったい気持ちだ。

翔也は私の頬に手を添えて微笑んだ。
私に“翔也”と言ってみろということらしい。
すると私の心臓はドクンと大きく跳ね上がる。

「し…翔也さん…」

「うん、それでいい…今日はもう疲れているだろうから、ゆっくり休んでくれ。…しかし、もしも俺が恋しくなったら奥のドアを開けて入ってくるがいい。俺も奈々が欲しくなったら遠慮なく行くからな。」

翔也は悪戯な表情で冗談のつもりだろうが、私の心臓は大きく跳ね上がったままだ。

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