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【お題小説】ぼくのサマーカーニバル(5ページ完結)

第1章 〈町にカーニバルがやってきた!〉


「ほら、ここに水場が有るだろう?
 ここで手を洗って清めるんだよ
 これから神さまにあいさつするんだからね
 
 ほら、こっちの線香に火を点けて、
 灰に挿すんだよ
 煙をたぐり寄せて、頭にかけておきな
 頭の憑き物がとれるかもよ

 さぁさ、ようやく神さまの前に行くよ
 天井から下がる綱を引っ張ってガラガラ音をたてな、これで神さまに気付いてもらうのさ
 玄関のノックみたいなものさ

 さぁ、2回こうべを垂れな
 次は2回大きく手を叩いて音を出すんだ
 ようやく神さまにお願いが出来るよ

 まずは坊やの住んでる所を頭の中で唱えな
 次に家族の名前を告げるのさ
 神さまに自己紹介さぁね
 言っておかないと誰のお願いかわからなくなるだろ?神さまも忙しいからね

 大抵の人間は家族の幸せや健康を願うものだ
 でもたまに文句を言いにくる奴もいらぁね
 家族といえども仲たがいすることだってあるからね、そんなときは告げ口してやるのさ

 さぁ、神さまとのお話しが終わったら、一歩後ろに下がってもう一回こうべを垂れときな
 神さまにお別れだよ

 神さまと触れ合っている瞬間、坊やは黄泉の国の玄関先まで出向いてるんだよ
 おっと気をつけな
 最期の一礼をきちんと済ませておかないと、こっちの世界に戻れなくなるからね」


マイクは言われたとおり作法を真似てみた

東洋のしきたりは知らないし、神社仏閣にも行ったことはない
キツネの女が教えてくれたとおり、思い出しながらゴニョゴニョ唱えてみる

マイクはつい今夜の事を愚痴っていた

ボクもロジャーのように友だちと夏祭りをまわりたかった!
ロジャーばっかり楽しそうでずるいや!

代わりたかった!


そんな想いを脳裏がよぎる

最期の一礼をするため、すっと右足を後ろに下げて一歩分だけ退こうとしたとき

思い出し思うように退くことが出来ず、段差でつまづいてしまった!


「あいてててて……」

マイクは転んでしまった

近くには誰も居ない
あのキツネ女もいつの間にか消えていた

マイクは立ち上がってお尻をパンパンはたき、その場所から離れるのだった…


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