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【お題小説】ぼくのサマーカーニバル(5ページ完結)

第1章 〈町にカーニバルがやってきた!〉

帰りに鳥居を抜ける

マイクは参道のど真ん中を通って鳥居をくぐってしまった


参道の真ん中は神さまのための通り道

鳥居は神さまを迎える門であると同時に戻り向きは“しっかりあちらの世界へお戻り下さい”という意味


東洋のしきたりなどマイクは知らないし
あのキツネ女もそこまでは教えてくれなかった



鳥居をくぐったあと、てくてく歩いていたが

“こんなに離れていたっけ?”

と何も無い真っ暗な場所をまっすぐ歩いていた


来るときは近くにミラーハウスやホラーハウスなど様々なアトラクションが並んでいたような気がする


年の近い子どもたちも走り回っていたはずなのに、今は誰も歩いていない


道に迷うも何も、ここは移動式遊園地の敷地の中のはず


東洋のブースだけこんなに離れていたっけ?


マイクはおかしいな、と思いながらもゆっくり歩いていた


少しだけ足どりが重たい


暗やみの中なので恐る恐る歩いてるだけだ、と自分でも思いこんでいるつもり


マイクはまだ気がついていなかった


足の筋肉が腐っていくことに

腕の肉が腐っていくことも

もちろん顔が腫れ上がって、干からびていこうとしていることにも


自分の身体に変化がおとずれ、徐々にゾンビのような風貌になっているとはまったく想像もしていなかった



いつの間にか


目の前には檻の前にいた


“あれ?行き止まり?檻の中に居るの?”


マイクは檻の柵をガンガン叩いてみるが、抜け出せそうにはなかった


檻の向こうは狭い通路が横切っていた


誰かが歩いてくる


ロジャーだ!


「お兄ちゃんッ!!」


と声を出したつもりだったがうまくしゃべれない


うーうー、うごめいた声しか出せなかった


「うわぁッ!?ビックリした!驚かせやがって
 このゾンビ野郎ッッッ!!!」


ロジャーは檻を蹴って、悪態をつき立ち去ってしまった


「お兄ちゃん、ボクだと気づいてない?」


神さまは願い通りマイクを入れ替えてくれたようだ

ロジャーとでは無かったが


最期の一礼をきちんと出来ず、鳥居の真ん中を通ってしまい、こちらの世界に戻れなくなってしまう


町では2人めの行方不明の子どものニュースが流れたが、すでに遊園地は次の土地へ去ってしまっていた


【おしまい】

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